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●憲法(02.6A憲法出題問題)
<問題>
 憲法第41条「立法」の意義を明らかにしながら、国会が以下の法律を制定した場合に生じる憲法上の問題点について論ぜよ。
(1) 大震災の後、被害が甚大であった甲市民を救済するために制定された法律
(2) 暴力団乙組の壊滅を目的とする乙組解散を命じるために制定された法律
 <解答の指針>
・ 小問(1)で、法律が41条に反しないという結論に達した場合には、95条についてバランスを失しない程度に論じて下さい。
・ 措置法についての規範定立の部分よりも各小問についてのあてはめを充実させるようにして下さい。
<合格者の作成した参考答案>

1(1)本問のように、特定の事件・紛争を解決するためにのみ制定される法律を措置法という。
 この点、憲法は41条において、国会は唯一の「立法」機関であるとするが、本件のような措置法の制定も、国会が行い得る「立法」の範囲に属するのか。ここで、41条の「立法」の意義が問題となる。
 思うに、「立法」を形式的意味の立法と解すると、同語反復か、せいぜい国会以外の機関が「法律」の形式で法規範を定立することを禁止するだけのことになってしまい妥当でない。
 そこで、「立法」とは、実質的意味において理解すべきである。
 (2)ここで、具体的に実質的意味の立法とは何かが問題となる。
 そもそも、41条が国会を唯一の立法機関とした趣旨は、国民代表である国会が、およそ国民生活を規律する法規範の制定を独占することで国民の権利自由を保障する点にある。
 とすれば、実質的意味の立法とは、国民の権利を直接に制限し義務を課す法規範に限らず、広く一般的・抽象的法規範をいうと解する。
 (3)このように解すると、本件のような措置法は、特定の人・事件を対象としているので、41条に反し、違憲となってしまいそうである。
 しかし、行政処分的性質を有する個別具体的な法律は、現代の福祉主義国家(25条以下参照)を実現・促進する上で、必要不可欠であり、全く許されないとするのは妥当でないと解する。
 ただ、他方において、無制限に許容してしまえば、権力分立(41条、65条、76条1項)に反し、また、特定の人を狙い撃ちにした不平等な立法がなされる恐れがある。
 そこで、@権力分立原理の核心を侵し、議会・政府の憲法上の関係を決定的に破壊するものでなく、A社会国家にふさわしい合理的な取扱いの違いを設定するものに限って、措置法も許容されると解すべきである。
2 小問(1)について
 (1)ア 本件の法律は、被災した甲市民を救済するための大綱を定めたものと考えられ、ある程度一般性・抽象性があるといえる。そうすると、具体的な救済方法・内容は行政権の裁量として残されているといえる。
 とすれば、本件法律が、権力分立の核心を侵し、議会・政府の憲法上の関係を決定的に破壊するものとはいえない(@)。
 イ また、震災と被害の程度・内容にもよるが、本件では甲市は大震災による重大な被害を受けていると思える。とすれば、既存の法律や給付の内容では不十分であると考えられる場合であり、甲市に対する特別な救援を定めることは、社会国家にふさわしい合理的な取扱いであるといえる(A)。
 ウ したがって、本件の法律は、41条に反しない。
 (2)そうであるとしても、本件法律が95条の地方特別法にあたるため、その制定には住民投票が必要となるかが問題となる。
 しかしながら、95条にいう「特別法」とは、特定の地方公共団体にとって不利益な負担を課すような内容の法律に限定されるので、本件では住民投票は不要である。
3 小問(2)について
 (1)本件の法律は、乙組という特定の団体に対し、解散という重大な不利益を与えるものである。そして、暴力団乙組を解散させる行為は、乙組のみを対象とし、純粋な個別具体的な行政行為であるといえる。
 とすれば、かかる行為について国会が立法できるとすることは、権力分立を侵し、議会と政府の憲法上の関係を決定的に破壊するものといえる(@)。
 (2)また、本件法律は、小問(1)の法律のように弱者救済を目的とするものと異なり、乙団体に解散という不利益を課すものである。そして、このような特定の暴力団の壊滅のような公安目的による行為は、乙組の結社の自由(21条1項)をも侵害することになる。
 とすれば、本件法律は、社会国家にふさわしい合理的な取扱いとして許容されるべきではないといえる(A)。
 (3)以上から、本件の法律は、41条に反し、違憲である。 以上

●採点講評

< 採点基準 >

1 基礎点…………………………………………………………………………20.0点
2 「立法」の意義……………………………………………………………………2.5点
 (1)形式的意味か実質的意味か(0.5点)
 (2)実質的意味の立法の意義(1.0点)
   (41条の趣旨から書かれていること)
 (3)措置法の合憲性についての規範(1.0点)
3 本件法律についてのあてはめ…………………………………………………2.5点
 (1)小問(1)について
    41条との関係で(1.0点)
    95条との関係で(0.5点)
 (2)小問(2)について
    41条との関係で(1.0点)
4 裁量点(答案の流れ、バランス、論述の充実さなどにつき適宜加点)…3.0点

< 採点講評 >

一  出題について
  本問は、「措置法(処分的法律)」に関する典型的かつ論点の少ない基本的な部類に入る問題である。このような問題では規範部分では差がほとんど付かず、あてはめ部分を充実させたいところである。しかも、本問は小問形式であり、(1)と(2)の比較の視点が見つけられるかという点も重要なポイントになるであろう。
「立法」の意義について
   受験生の大多数が、実質的意味の立法→一般的・抽象的法規範という流れで書くところであるが、本問ではここの部分はあくまで前提部分にすぎないので、出来る限りコンパクトに論証すべきである。
 ここでポイントになってくるのは、後者の論述で憲法41条の趣旨から書けているのかという点である。他説批判よりもこういった本質部分を書くことが司法試験では要求されている。
措置法に関する基準
   まず、驚いたのは、措置に関する基準を挙げずに、一般的・抽象的規範か否かだけで本問を処理しようとしている答案が意外に多かったことである。このように処理されてしまった方は、本問の論点をあまり知らなかったのだと思われるので、この機会にしっかりと復習しておいて戴きたいと思う。
 次に、規範が不明確なものもあった。ここの基準は、芦部先生の掲げられている基準が非常にわかりやすいので復習の時に確認しておいて戴きたい(受験新報の解説にもわかりやすく書かれているので、そちらで確認して戴いても構わないと思う)。
本件法律に対するあてはめ
 
1 小問(1)について
 (1) は結論的には合憲とするのが妥当だということはすぐにわかると思う。
 このあてはめで一番悩む所は、権力分立の核心を本件法律が侵してしまうのかという点であろう。ここでは、本件法律によっても、細かな具体的な救済方法等は内閣(行政権)の裁量に委ねられているということが論じられると良かったのではないかと思う。
2 小問(1)について
 (1) は結論的には合憲とするのが妥当だということはすぐにわかると思う。
 このあてはめで一番悩む所は、権力分立の核心を本件法律が侵してしまうのかという点であろう。ここでは、本件法律によっても、細かな具体的な救済方法等は内閣(行政権)の裁量に委ねられているということが論じられると良かったのではないかと思う。

小問(2)について
 (2)は結論的には違憲とするのが妥当だということはすぐにわかると思う。
 (2)における重要ポイントは、暴力団の解散行為は単純な行政行為ではないかという点である。これに気がつけば、(2)についてのあてはめも比較的容易なものになったのではないかと思う。
その他
 
1  まず本問で「立法」の意義を論じるにあたっては、本件の2つの法律と関連付けて論じられると印象が良くなるであろう。
 次に、95条についてであるが、大半の方が何を聞かれているのかよくわからなかったようである。ここでは、(1)の法律が利益を与えるものゆえ95条の「特別法」には該当しないのではないかという視点に気付いたかがポイントになってくる。今回気付かなかった方も復習だけはしておいて戴きたいところである。